冬の時代を笑いで乗切るために<短編物語>読むだけで税や会計の 生きた知識が不思議に身に付く
<短編物語>第9話 資金城 盛衰記 その2
資金城 城主の危機感
「ドンドン資金が減ってゆく、、、このままではいずれ落城だ。資金が減る原因の<犯人捜し>をしなくては、、、民主主義だの人権だのというが、城の資金が減るとは自然現象ではない。人災だ。」
資金城主は毎日毎日足もとが崩れてゆくような気分であった。彼は原因を探すために、これまでを振り返ってみた。
泰平家具製造販売の時代 規模も小さく泰平社長の職人としての腕がウリで、そのころは設備も最小限しかなかったので見込み生産の余力はなく、注文を受けてから制作を始めるしか道はなかった。泰平社長の腕が良かったこともあり、手作りなので高い値段でも注文が連続し、高付加価値経営が続いた。資金蓄積時代であった。
そのころ銀行が融資をしつこく勧めた。資金が溜まる一方なので銀行融資はいらないのに借入金がドーンと資金城に振込まれた。使う当てもないから資金をそのままにしていたら銀行紹介のコンサルタントが設備投資して見込み生産に切り替えることを提案してきた。
「城主である私は金融機関やコンサルタントは資金というナマミの実体をもてあそぶ人たちだとの偏見から警戒していた。」
泰平社長はその話に乗った。従業員も増やした。はじめは、作れば売れる、売ればもうかる時期であった。
資金も更に溜まった。カネがカネを呼ぶように資金城の本丸には資金があふれ、資金の置き場として張出出丸に余剰資金をたくわえた。
「ここからが社長のエライところだ!」普通の人間なら現金を手にして赤い灯・青い灯のネオン街に繰り出すところ、そんな浮かれた動きはされなかったナ。」
社長は本丸に資金が多く入ってくると気が緩むと自らを律し、売上金の中には原材料の支払いに充てる部分を分けて置くことで、必要以上の不要な購入に走ることを戒められた。そこで余剰資金の入る張出出丸というのを作られた。相撲が好きな社長らしく、正横綱、張出横綱の張出という名前だ。予備という意味だ。
別に、売上金と支払い資金を混同させないように支払い資金専用の固定丸を設けて本丸の余剰資金の中から支払いに充てる金額をソコに移動された。これも良い考えだと思った。
それからは、その月の支払い相当額だけ本丸から固定丸に移動していたが、それでも本丸には資金があふれた。売上が好調だったんだ。そこで翌月以降の少し先の支払い資金の貯蔵場所として固定丸とは別に金蔵出丸を設けた。
「当面の支払いは固定丸に、その先の支払いは金蔵出丸にと同じ支払いでも目の前と、さらに先の支払いを区別されたのだ。もし或る月の売上げがゼロになってサイアク固定出丸がカラになっても金蔵出丸に資金がある限り取引先に迷惑をかけないで済む。これが泰平社長の考え方だ!実に堅実だと思った。自分よりも事業を取り巻く取引先を大事にされる。別に大学で経営学とやらを学んだのではなく泰平社長の独創だ。経営学のセンセ~はこんなこと教えないよな、、」
次回予告
「息子さんが大きくなっていきなり専務として入社してから変わってきた。規模のみ拡大、他人社員が辞めてゆく。二代目経営者の会に入り外車を乗り回し派手好きの上、結婚した嫁がさらに見栄っ張り、名前も見栄子さんだ。資金がドンドン出てゆく。売上を追うあまり利益率が下がり、運転資金の借入(以前は設備資金こそ銀行借入だが運転資金は困らなかった)。マアこんな筋書きだ。」