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これからの経営には数字と税金の知識が必要です

税務会計フォアユーパートナーズ

(担当)財務分析家
木村栄昌
(税理士・米国公認会計士)

木村所長に聞く

第 51 号「景気と歴史・財政問題・インフレの兆し・説明合意」

   こんにちわ、御忙しいと思いますが、またお話きかせていただけますか?

木村: また来たの。 今度は喋らんよ。 前回喋りすぎた。 税理士ずれがアメリカやヘチマやとあれだけべらべら喋ったなと色々嫌みいわれましたよ。 そらそうや、税理士は(1)申告書をきちっとつくること、(2)税務署来たときあんじょうしてくれること、この2点に尽きるわけで、皆さんはこのためだけにカネ払う、それも少ない程良い、これが本音やろ。 私の話なんかだれも聞きませんよ。

   いい評判も聞いてますよ。

木村: ホンマかいな、また人しゃべらそおもてうまい事言いよる。 うちは顧客第一やからお客に役立たんことは一切せん、言わん。 いまから得意先廻りや、帰ってんか。シッシッ。

   まぁ、そうおっしゃらずに5分だけでも・・・・・・景気も良くなってきたと新聞に書いてましたが。

木村: あほ、あれは太平洋戦争の大本営発表と同じや、負け戦でも勝った言うて問題先送りして破滅へ行くんや。

   と言いますと・・・・・・

木村: 私もこの方面の専門家違うので、一介の税理士として御得意先の為に役に立てる程度しか分からんが(こうしてインタビュアーのペースに乗せられていく)少なくとも新聞以外にお金払って新聞にのらん非公開情報をとったり講演聞きに行ったり本の何冊か読んだりしてる。何の為かというと得意先の資金繰りよくするため銀行とどう付き合うべきか、資産はどんな形で持つべきか(株か、不動産か、ゴールドか)デフレかインフレか、もしインフレなったら終戦後のインフレではどんな人が儲けどんな人が没落したか、給与や売上はどう影響受けるのか、何がインフレの兆候か、ペイオフ解禁になったらどうなるのか、会社の預金はどうするのか、今後円安になるのか、増税は何税か、見せかけの減税は何税か、だったらどうする、等について社長さんと話が出きる準備はしてます。それがキチンと申告書を作る事に繋がるのです。どの社長も「景気が良くなる」なんて、あんたみたいな脳天気なこと言ってないよ。勉強足らんで。

   すいません。 ところでどんな点を注意したらええんですか。

木村: 一つのポイントは増発した国債を日銀が引き受けるかどうかです。

 もしそうなればインフレに近づくのでは。通貨発行する中央銀行が借金も引き受けるわけで、貸借対照表の現預金の部と借入金の部が同時にイッキに膨れるわけで、通貨の過剰流動性でインフレに行くのではないですか。(いわゆる通貨の堕落がはじまる)

 みんな先行き不安だったからせっせと貯金してきたけれど預金の値打ちはすぐ下がります。インフレになったらラーメン一杯 6 万円ぐらいになるだろうと言われていますから。(第一次大戦後のドイツではリュックにマルクを一杯詰め込んでパン屋さんへ行ってもパン一切れしか買えなかったそうです) そして「年俸制」の給与所得者は窮地に陥り(必然的に利益分配制度やストックオプションなどが整備されている企業に人材の大移動が起こる)、悲惨な事は、生活に行きづまって行き場のない年寄りの年金生活者の自殺が相次ぐといわれています。(従って企業は硬直的な給与制度を改め、年金の人は今のうちに少しでもフリーハンドの原資を溜める事です)

   こんなになって一体誰が得するんでしょうか?

木村: いい質問です。常に、物事の全体を見、「誰が儲けるのか」を考える習慣は大事です。儲ける人、一人います。 国です。 なんせ 400 兆円の借金王ですから。インフレで国の借金はイッキに減り 財政問題は解決です。 (戦後も激しいインフレで戦時国債の額面価値が極端に下がったので完全に償還できた)

 しかし人々の生活は大変です。またインフレ抑制という大義名分で高金利にシフトします。高金利のため変動金利の人は減るはずの元金が減りません。こんな時注意しなければならんのがマスコミに登場する御用学者やお雇い外国人です。政府擁護論です。彼らの言う事の逆が真実と思えばよい。

   税金はどうなるんですか?

木村: ラーメン一杯 6 万円ですから税収も最高になります。 国は借金返済・税収アップです。

   どうすれば良いでしょうか。

木村: むかしはやった歌じゃないけど「あなたなーらどうする。」

   もし私に財産があれば、外国へ財産を移転しますね。 いや移住かな、外国では贈与税の無い国(シンガポール・香港・また米国も配偶者への贈与は無税)も多いようだし相続税も安いようだし・・・・・・

木村: よく勉強してますね。 でもそれはできません。

   ええーっ、そんなあほな。

木村: 今年の 4 月 1 日から、租税特別措置法が改正され、「相続や贈与で国外財産を取得した海外居住者」も日本の相続税贈与税の納税義務を負う事になりました。従来は納税義務は無かったのです。但し、日本国籍を有しない者や、日本国籍があっても財産取得時に5年を越えて国内に住所を有しない者の納税義務はありません。

 この税制が意図しているものはもうお分かりでしょう。 問題は相続税法本法でなく特別措置法で定められたことと、5 年という点です。 今から 5 年経てば海外へ住所を移した人は相続税贈与税が免れられる為、日本から脱出する人が増えるかもしれん。しかしこの 5 年経過する迄は(日本国籍を捨てない限り)網をかけられたままです。この 5 年の間に、国は国民が日本を捨てなくても良い国に造り替えることは十分に考えられます。

   捨てなくても良い国とは。

木村: 次世代に負担の無い、つまり国債の残高が無く償還義務のない、税金もそう高くない、若い人が希望を持てる国です。私の独断ですが、この 5 年内にインフレを起こしてそのことを成し遂げようと、国は大博打を打つかもしれないと考える事は、考えすぎでしょうか。 一番気になる点です。

   何を目安にしてインフレの兆しか を、見極めたら良いでしょうか。

木村: それはとても難しい事で、私なんかが答えられません。代わりに私の個人的な考えを言う事と、私が読む参考書を御紹介して答えの代わりにさせて下さい。 ポイントは、

  • 低金利政策が続く
  • ペイオフ解禁が延期されたまま(現在がこの状況)
  • 円安になり 200 円を超えたら危ない(インフレ懸念)のはじまり
  • 次に日銀が国債引受すること
  • アメリカ株式がまだ上がること

 これらの兆候と逆に円高基調でドルが弱くなり、株式市場も傾向的に下落方向なら、デフレ傾向で人余り、物余りが続き差が付く時代になるのでは、と思います。そうなれば民需は振るわず(401K など)社会保障の自弁化でお金が更にストックされる一方、アメリカ株は管理相場で、日本の株は企業の透明性に難があり共に上昇する要因はこれからも無いのでは、と思います。

 対応策としては中小企業は経営者がなるべく多い目に報酬をとり、それを浪費せずいつでも会社に拠出できるよう資本の蓄積に努めたいものです。

   ありがとうございました。最後にもう一言。

木村: 最初に言った税理士としての(1)が基本です。 「キチン」と申告書を作るという表現には依頼者に満足と安心を持っていただく意味が込められています。税金というムツカシイイヤなものに満足や安心という言葉がなじむには「時間をかけた事前の準備」と、「いくつかの選択肢の 比較検討によるコンサルティングとインフォームドコンセント(説明合意)」がなされてはじめて可能なのです。

 そこまでしても「税」という厭なものを扱う以上、我々は誤解され時には嫌みも言われます。お前ら税務署と同じやと。それでも大切なお客様に満足を得ていただくには徹底した勉強により「これからどうなる」と予知して比較検討の余裕を持っていただくことが質の良いサービスなのです。申告書を単に誤りなく作るだけなら今はコンピューターがしてくれます。 厚みのあるサービスに支えられて(1)が出来ておれば(2)は自然にうまくいきます。

 今、雪印の事件の示すとおり何でも隠す日本の体質も間もなく変わるように思います。いま、新しいタイプの経営者がドンドン世に出ています。 特別なキャリアもない一見普通の若者ですが、頭が柔軟で、官僚的な毒と無縁なのです。 税に対する感覚も変わるでしょう。私は「21 世紀は普通の人の反乱が始まる」と 50 号で述べましたが、日々その感を強くしています。

(参考書)
『通貨が堕落するとき』木村 剛(講談社)2000.5.31
『若い人を犬死にさせないための 未来経済学 』藤原 直哉(三五館)1999.5
『投機的時代の研究』松藤 民輔(PHP研究所)2000.6.1
『相場師一代』是川 銀蔵(小学館文庫)1999.10