事務所の経営責任者としてのお考えをお話ください。
木村:お得意先にとって「お得」な会計事務所 でありたいと思っています。
といいますと。
木村: 早い話が、払っている 顧問料がそれだけの値打ちがあるか ということです。
よその会計事務所の平均像は、先生一人で担当者は無資格者で経験も少ない、質問してもトンチンカンなことしか答えられない場合が多いと聞いています。先生も勉強がたらんひとが多いようです。試験受けないで資格貰った人が六割の業界なのでそれはしかたないかもしれんけれど、あっちこっちで聞く話からうける印象は、皆さん辛抱しておられるのではないでしょうか。そんな事務所に愛想が尽きて、ウチへ変わってこられた新規の社長の話を聞かしていただいて、これではいけない、せめて当所の得意先には絶対にそのような気持ちをもたれないようにしよう、と念じております。
どの会社も、いまかかってる会計事務所がどんなレベルかわからんから、ひょっとしたら今のとこより悪いかも知れん。変えるのも勇気いるし、仕返しされてもかなわん。そこで辛抱しておられるようです。「感度」が鈍く なってしまうと信任されてると勘違いして毎月顧問料を機械的に懐にいれてしまう。そのお金がどれだけ血と汗の結晶であるということも考えないで・・・・・・ 本当は愛想をつかされているのに 慢心 して気がつかなくなったらおしまいと思っています。別のコラムで Doing 金言集を僭越ながら書かせていただきましたが、一番にこれを、もってきました。
早い話、顧問料は捨て金と思っておられる社長が多いんと違いますか。お客から、捨扶持もろて、大した役にもたたん、勉強もせん、質問しても答えが返らんでは、いずれ世間から見捨てられます。
私のところは、担当は有資格者か、10 年以上のベテランです。そして必要に応じて私も関わります。さらに必要ならばもう一人も二人も付けます。現にそういう関与先があります。五人の有資格者全部投入することも可能です。 ヒューマンパワーが分厚いことは安心を提供できると考えています。
つぎに、税務調査があってもこのヒューマンパワーが効き、概ね有利な解決ができました。以前、税務署の調査官と話していたとき、その人は法律にすこぶる詳しく、私も独学で法律はその場その場の必要に応じて勉強してきたつもりでしたが勉強不足を感じました。勿論、私の場合は税法を解釈運用するに必要な範囲で、なにも法律の専門家になる必要は無いのですが、法律の素養があれば、国税局や税務署と折衝するとき、もっと説得力をもって且つスマートに解決(勿論こちらに有利に)できるのではないかと考えました。ちょうど同業の方が大学院の職業人コースで法律を学ばれている記事を雑誌で見たので、私も入学試験を受けたら合格しましたので、2 年行きました。
仕事をしながら、しかも東京で時間的にはきつかったですが、どの科目も一流の先生につくことができ、知識だけでなく人間的にも大きな収穫を得させていただきました。そんな勉強を生かして関与先様の争点につき、私が指導して数人の税理士で検討した見解書で課税当局のご理解を得られ、有利に解決した案件がいくつかあります。
多重層の人材を擁することが大切と考えていますから、専門家だけでなく、周辺業務でも専門的な仕事ができる人材を育てるようにしています。そして、みんなよく働いてくれて、ここ迄これることができました。私はまとめ役でしかもカドの多い人間なのに、今日現在まで 四半世紀 を歩んでこれたのは、得意先様の御引立て と共に私についてきてくれている税理士の先生型や職員の人々に心の奥で 感謝しています。日曜日の夕方、犬と散歩していて赤い夕日をみて「何とありがたいこと」と思います。 私はテレ屋なので面と向かって I Love You とは言えませんがこれは本心です。(インタビュアーの影の声−突然、所長の声がうわづり、眼がウルウルする・・!?)
コンピューターの操作や、エクセル等の利用の仕方についてそれ専門のインストラクターが出前サービスします。またオーダーメイドのチェックリストやマニュアルづくりのおてつだいもします。さらに研修会やゼミも開催しています。変化の早い今、迷うことなく本業に邁進していただく条件を整備してご提供しています。
また、法律、特許、登記、保険、コンピューター関係、大学、研究所、シンクタンク、監査法人、独立系ベンチャーキャピタル、シカゴの会計事務所、英語、フランス語の通訳、心理カウンセラーなどにヒューマンネットワークがあり当所が専門にしない分野での関与先様の問題解決に間接的に御役に立たせていただいております。
当所の仕事のしかたの特徴としては、先方へお伺いする スタイルであること、別掲の年表でもおわかりのとおり 勉強会の充実 に力を入れていること、ネットワークが形成されていること、顧問料 をトータルにみて 安くなるよう 中身充実に努めていること、それにほんの少しだけの国際性でしょうか。
アメリカの資格もとられたとか。
木村: まだ一つ残っているので登録できませんが、ご相談をお受けするときに外国がらみでも税務、会計、法律、監査制度などで、ある程度の輪郭は出せるように、お陰様でなりました。今迄わからなかったのですが、日本の税法にもアメリカから輸入したんだなと、わかる規定がいくつもあり原理原則は普遍的だと感じました。
昨年だけでも、米国へ会社を作る御相談、オーストラリアのご親戚の資産の問題、外国子会社へ出向している方の所得税、海外への投資の保全、米国への貸し金の貸し倒れ、外国人の採用と源泉所得税、などの案件が関与先各社でありました。
外国との人の行き来が多くなり、これからもっと多くなるでしょう。 悔しいですが米国の基準がグローバルスタンダードに最も近いので役に立つのです。 自分で言うのもなんですが、お得意先に お役に立てる幅 が少し広がったかもしれません。
逆に、会計は世界統一へ向かうでしょう。 「税務会計事務所」と名乗るなら、ローカルとインターナショナルの両方が必要です。 ましてウチは、FYI (For You International・・・・・・for you の you とは、お客様のことです) を理念としておりますから。
今後の動向でアメリカの制度で日本に入りそうなものは?
木村: 次の二つとおもいます。
それは、パートナーシップ制度の導入(税制も含めて)リバースモーケージ、ノンリコースローン、信託の拡大です。日本の法制は大陸法を継受しており英米型ではありません。それが急速に変化してきており、法律も税制も学者がすでに研究に入っており、専門誌の論文はこの関係が目白押しです。やがて現実化します。
現に、昨年来成立した「金融システム改革法」は米国証券取引法と酷似しています。成長企業の資金調達のために立法された「有限責任投資事業組合法」も米国のパートナーシップの応用で課税の仕組みも同じです。
その主旨は、個人が中心になって 自己責任で起業しやすいように する、他人からも資金を集めやすくする(上記の内のパートナーシップ・信託の応用としての投資組合が之に該当)とともに、自分で稼いだものは自分の人生で自分のために使い切る、次に社会に役立てる(上記のうちのリバースモーケージ・・・・・・自分の財産を担保にした借入で死亡時にゼロになる・・・・・・と、ノンリコースローン、信託の応用が該当)、最後に残れば相続人へいく。 親子の関係も段々ドライになり、好いことか悪いことかわかりませんが米国型になるのではないでしょうか。
アメリカでは高等教育の学資は親から「借りる」のがあたりまえで子供は返す力を学生の間につけなくてはならず、よく勉強します。 大学の図書館も午前3時まで開いているところが多く、オールナイトのところもあるようです。
日本の旧制度であるイエは完全に崩壊し、女性は自由を満喫しもっと猛々しくなるように思います。
恐いですね。
木村: 恐いのはそんなことではなく、大和の国としてのすばらしい歴史と伝統が風化していき、米国日本州のようになることです。
アメリカと 4 年間も戦争した国は世界のどこにもなく、あれは近代史の準決勝かアジア史の決勝戦であり、負けてもよくやったと胸を張ればよいのです。
私はアメリカへ行けば、いつもそり返って街を歩くようにしています。
小さくなって引っ込むことはしません。 言葉は先程も言ったように不自由ですが気合負けしないようにしていると、向こうから "Sir, Sir!" と譲ってくれます。 向こうは肉食の狩猟民族ですから弱いと思えばどんどん追いこんで来ます。
われわれの DNA には、素晴らしい歴史と狩猟民族より次元の高い、闘わずして彼らを統御できる「大和心・やまとごころ」が埋め込まれているのですから、ひっこむことはありません。 英語やアメリカのことを勉強するのは世界が一つになっていく 21 世紀に敵を知ることにより(関与先様のために)有利に行動できると思うからです。
最近、所長が嬉しかったことはなんですか。
木村: 以前勤めてくれていて、何らかの理由で退職した人でも、遊びに来てくれたときは嬉しいですね。最近も、以前事務員として勤務していた人が、司法試験に合格しましたと報告に来てくれました。 会計事務所勤務経験のある弁護士さんはめずらしいので、よくやったと大いに激励してあげました。
最後に、今後に向けて役に立つこと をお話ください。
木村: 昨年、東京でインターネットを使ってドンドン売上を伸ばしている数社の見学会に参加して感じたのですがマーケティングが完全に変化していくということです。直接お客様へ販売していく。かつて「製販同盟」という言葉があり、卸を中抜きして製造と販売が直接手を結ぶことですが、これさえ死語になりつつあり大規模小売店は苦しくなるように思います。
小規模の小売りはどこまで御客様の心を掴むかがポイントになってくるような気がします。 代理店ビジネスも大きい所は苦境に、小さいところは 木目細かさ が勝負の分かれ道のように感じます。
また、今後は中小企業で冒頭に申し上げた少人数私募債を発行する会社が多くなると思いますので、案内文のひな型を掲げておきます。
木村税務会計事務所では インターネットやEメール はどの程度御使いですか。
木村: インターネットは公示価格、法律条文、税務書類の取り寄せ、判例検索等に使っています。メールアドレスはありますが、名刺などに書いていません。其の理由は飛び込んでくる質の悪い情報に振り回されたくないこと、情報過多を戒め、考える時間を多く持ちたいからです。会計事務所は口が堅くなければなりません。関与先とのやり取りも完全にプロテクト(保護)されてなければなりません。
どのレベルまでのひとにアドレスが必要かも含め、今は内部で研究中です。
その外に、今後注意する点は?
木村: 兎に角 資金(おかね)が大事 な時代です。この 10 年間で個人、法人合わせて純資産が増えたか減ったかのチェックをなさり、答えがいずれでも、其の原因を検討されることが今後の時代への指針になると思います。
また、独断と偏見を恐れずに申し上げますと、これからは、メッキだけの人のメッキがはげ、本当の底力がためされると思います。 金だけ、学歴だけ、地位だけの人々に対し、それらを持たないフツーの人々の反乱が始まるのです。 これが 21 世紀の幕開けではないでしょうか。
どういうことですか。
木村: ワカリヤスク勝ち組・負け組で申し上げると(これは、私のとんでもない勝手な思い込みですが)ひょっとしたら当たるかもしれません。 負け組に入るのは役人、教師、裁判所関係者、巨大企業のなかで官僚に守られたところ。勝ち組は、一芸に秀出た職人、技術者、地場・土着の企業家、と思うのですが、あなたはどう思いますか。
私にはわかりません。 ところで事務所も四半世紀を越えられたということですが、今後の御方針なりビジョンをお話下さい。
木村: よく聞いてくださいました。
今迄を振り返ってみますと、後掲の年表にもありますように、第 I 創業期は事務所の基礎をつくるため私が八面六臂でオールラウンドに働き、第 II 創業期は、実務は若い人に経験を積ませ、経営面は私一人が、何の手本もなく手さぐりで、独自に一人で悩みながら経営してきました。今後は第 III 創業期となりますので、税理士の先生方には経営面にも参画していただこうと思っています。 売上をつくること、人や金にまつわる経営の労苦を身体でわかってはじめて、担当先の社長の気持ちが理解できるのではないでしょうか。
マネージメントプロセスに参加し、給料を貰う立場から払う立場にシフトします。これにより経営感覚を磨いてもらいます。では木村はどうするのかということになります。私は、初心に還り 関与先廻り(お得先パトロールとも言わせていただいています)をしたいです。そうして、その関与先担当者を後方支援したいですね。
第 II 創業期の後半も初心にもどり、勉強の仕込み直しをしましたが、節目では原点回帰が必要です。このほか新サービス新法案の研究・開発、情報収集、渉外面(国際部面)と最終判断を担当することになります。我が業界もヌルマ湯的に規制で守られてきました。 しかし規制緩和の波が押し寄せ、本当の競争が始まります。
よその会計事務所にない特性を打ち出しての勝負になります。
では本当に最後に 税制 について一言お考えを述べて下さい。しめくくりとして、お好きな人物とか言葉を。
木村: ほんとに最後ですか、ぼちぼち解放してくださいよ。
ほんとに最後です。
木村: 税制について申し上げれば、要するに 累進税は悪 であると思っています。
つまり努力した者から、努力するればするほど税金を取り上げ、あまり努力しない人に給付金補助金として出し、其の人達を過保護にして努力する気持ちも奪うからです。人一倍働き、勇気だし、頭使っている、顧問先の社長さんのような人々からもっともっとと取り上げることで、よく働き、努力する人も段々ヤル気をなくしていきかねん。結局、世の中に占めるヤル気のある人が少なくなり、依存型の社会になり、活気がなくなって行くのです。 税金を配分するために役人の数だけが増えることになり、悪循環です。 敢えて荒っぽく言えば、税率は全員、所得の一割が平等でよいと思います。
そう言われれば、そうですね。
木村: 二つ目の御質問ですが、歴史上好きな人物は多勢いますので、挙げきれません。言葉としては、適塾の緒方洪庵の言葉に 職業上の戒め として「人の為のみ、安逸を思はず、名利を顧みず、唯おのれをすてて人を救わんことを希ふべし。(中略)人の艱苦を寛解するの外他事あるものにあらず」とあります。 私にとって及ばず乍ら、目標とさせていただきたいと思っております。
長時間ありがとうございました。
木村: こちらこそ、ありがとうございました。