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税務会計フォアユーパートナーズ

(担当)財務分析家
木村栄昌
(税理士・米国公認会計士)

Doing バックナンバー

第 51 号「こう変わる法人税法と会計制度」

1、平成 12 年度法人税法改正(抜粋)

平成 12 年度における法人税法の改正内容について、主要なもの2つをご紹介します。

(1)有価証券の評価方法の改正

法人が所有する有価証券はその保有目的に応じて評価することになりました。

  保有目的別分類 評価方法 評価損益等の法人税法上の取り扱い
1 売買目的等有価証券 時価法 評価差額を各期の損金または益金に算入
2 満期保有目的等有価証券 原価法  
3 満期保有目的等有価証券
(償還金額・償還期限あり)
償却原価法 償還差額損益相当額を期間分配して損金または益金に算入
4 その他の有価証券 原価法  
  • 時価評価の対象となる「売買目的有価証券」の範囲は、「社内に運用責任者を置いて短期売買目的で取得したもの」「売買目的であると認識してその旨を帳簿等に記載したもの」に限定されています。中小企業の場合、ほとんどの有価証券は「その他の有価証券」に分類されることになると思われます。
  • この改正に伴い、従来認められていた「低価法」が廃止されました。中小企業にとっては、むしろ低価法が廃止されたことの影響の方が大きいと思われます。含み損のある有価証券を所有している場合には、要注意です。
(2)ソフトウェアの処理方法の改正

従来、ソフトウェアに関しては、外部に対する開発委託費用及びソフトウェアの購入費用のみ繰延資産として取り扱うこととされていましたが、これが次のように改められました。

  改正前 改正後
資産区分 繰延資産 減価償却資産(無形固定資産)
償却区分 他社から購入 5 年 開発研究用 3 年
他社へ開発委託 販売用
自社開発 資産計上不要 自社使用 5 年

今回の改正については、(ア)従来は資産計上不要であった「自社開発」によるソフトウェアの取得が資産計上しなければならなくなったこと、(イ)ソフトウェアの資産区分が繰延資産から減価償却資産に変更されたことに従い、少額試算の損金算入基準が 20 万円未満から 10 万円未満になること、の 2 点に特に注意して下さい。


2、会計制度の改訂

国際会計基準の大綱が 1998 年末に固まって以来、日本の会計制度も国際基準との調和を図る方向で相次ぐ改訂が行われています。日本の会計もいよいよ国際基準に近づいてきました。すでに「連結会計制度の改正」「税効果会計の導入」などの改訂が行われていますが、さらに今後予定されている新制度として以下のようなものがあります。

  1. キャッシュフロー計算書(完全導入)
  2. 金融商品に対する時価会計の導入
  3. 退職給付会計
  4. 減損会計
(参考)減損会計:
ある資産から生じる将来キャッシュフローの見積り額が資産の帳簿価格を下回る場合に、当該資産の帳簿価額を減額するという会計処理。

以上のような新しい会計制度は必ずしも全ての企業に強制適用されるものではありません。株式を公開していない企業にとってはその適用は任意です。

しかしながら、実際には中小企業も無関係ではいられません。上記のような会計制度の改訂は、従来の会計制度が複雑化した企業活動を十分に表現できなくなったことに起因するものですから、逆にいうと、企業の実態をより反映した財務諸表を作成するためには、新しい会計制度を取り入れざるをえないのです。経営者自身が、経営上の判断をより的確に行うためには、新しい会計制度を積極的に取り入れていく必要があるのです。

会計は企業活動の鏡。財務諸表は経営の羅針盤。今一度、会計から企業活動を見つめなおし、明日へのヒントをつかんでいただきたいと思います。